「Night in the Woods」レビュー。大人ってなんだろう。

ゲーム

大人ってなんだろう。タバコやお酒が許される人?経済的に自立できる人?それとも20歳を超えた人?辞書やネットで調べてみても、その定義や考え方は人によって異なってくる。20歳を超えた人という考えもあれば、18歳を超えた人という考え方もある。年齢ではなく考え方や態度が十分に成長した人が大人って言う人もいた。

これが「大人」という定義を決めるのは非常に難しい。それがゆえに今でも多くの人が議論している。日本では20歳になると成人という扱いになるが、2022年からは18歳で成人になるというのだ。ぼくは20歳になったら成人、すなわち大人に自動的になれると思っていた。なのでこの法改正によって、ぼくの大人の定義が揺らいでしまった。では大人ってなんなのだろう?それとも18歳のぼくはすでに大人なのだろうか?

誰しも1度は考えたことのある「大人ってなんだ?」という疑問を、今回プレイしたNight in the Woodsは語ってくれた。

『ナイト・イン・ザ・ウッズ (Night in the Woods)』 ロンチトレーラー
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大学を中退したネコ

本作の舞台はアメリカのド田舎にある町ポッサム・スプリング。かつては炭鉱業で栄えた街だが今では過疎化が進んでいる。そして主人公はある理由で大学を中退し、実家へ帰ることになった20歳のネコ、メイだ。実家に住むことなったメイは、かつての友人たちや街の住人たちとの交流、変わってしまった街の探索などで帰郷の秋を過ごす。

そして一緒にバンド活動をしていた友人のグレッグやビー、アンガスたちと無意味なバンド練習をしたり、遊び呆けるなかで大きな事件に巻き込まれていく、というのが大まかなストーリーだ。

探索することで見える街

Night in the Woodsはシンプルな2D横スクロールゲーム。しかしアクションといったものは一切なく、街を探索したり、住人と会話する日々を繰り返すことでストーリを進められるようになっている。マップ探索をすることで街や住人のことがわかるようになってはいるが、ストーリに関わるイベント以外は飛ばすことも可能だ。

とはいえ、探索がこのゲームの醍醐味。日ごとに街の様子は変わっていくため、何度プレイしても飽きることはない。個性豊かな住人と会話することでメイの知らなかった一面が見えたり、探索することで街のことが深く知れるからだ。これらをやっておくとストーリーの理解がより深まるだろう。

ちなみにプレイ時間はおおよそ8時間程度となっている。ぼくの場合は探索を入念に行ったので、クリアまで約11時間ほどかかった。

絵本のようなグラフィックだが内容は現実的

本作最大の魅力は、絵本のようなグラフィックからは想像できない現実的なストーリーとキャラクターたちだろう。キャラクターたちは可愛らしい動物たちにも関わらず、だ。登場する人物(動物?)たちにはそれぞれ生活があり、悩みもある。会話を通すとわかるのだが、彼らはほぼ全員悩み、今の生活に不満があることがわかるのだ。

先ほども述べた通り、 Night in the Woods は廃れたド田舎の街だ。そのため町人にはまともな仕事がなく、スーパーのパートなどで日々の生活費をなんとか賄っている。そしてこの街に未来を見いだせない若者たちはどんどん離れていってしまい、街の経済が破綻しかけている。街の住人は労働環境について愚痴をこぼし、少年少女たちは非行を繰り返す。それらが豊かなテキストや、どこか物悲しいBGM、寂しい秋のグラフィックともにポッサム・スプリングスというボロボロの街を丁寧に描いている。

大人になれない子ども

メイも例外ではない。メイは未来に対する不安を抱えているのだ。高校の時には暴力沙汰を起こし、恋人の前でゲロを吐き、大学も中退した。大学進学に掛かったお金を棒に振るっただけでなく、暴力沙汰で多大な借金を抱えて実家まで担保に入れられてしまった。親には申し訳ないし、その失敗経験がトラウマになり精神障害まで発症する事態に。

彼女はボロボロだ。20歳というまだまだ多感な時期に辛い経験を味わいすぎてしまった。だけど周りの友達は知らぬ間に成長し、どこかへ飛んでしまった。つるんでいた友達もそれぞれの道を歩んでいる。まるで大人のように物事を考えて、大人のように苦しんでいる。だけど自分だけ成長していない、置いてかれている。私は本当に20歳で、大人と名乗れるまでに成長したのか?メイはストーリーを通じてこの感情を味わうことになる。

だからこそ忘れたい。逃避したい。大人になってもいいことなんかないんだ。だって周りの大人たちはみんな退屈そうだ。昔のように親の元で暮らし、友達と馬鹿をやりたい。夕方にダラダラ起きて、自由気ままに遊びたい。てか大人ってどうすればなれるんだよ?!けど、どこか心の片隅に罪悪感はある。メイは全体を通してこのように感じていたはずだ。

そしてぼくはこの気持ちが痛いほどわかった。ぼくだって大人になんかなりたくない。家でゲームをしたり映画を観ていたい。しかし周りのみんなは酒やタバコをしたいから、自由な一人暮らしをしたいから、だから大人になりたいって言っている。ハッキリいって意味がわからない。日々Twitterで愚痴をこぼす大人になりたいか?社畜として会社で上司に頭を下げながら働きたいか?そんなのぼくは絶対嫌だ。

しかし誰もが必ず大人になる日が来る。高校の昼休み、それを強く実感した。ぼくにはよくFPSゲームなどを一緒にやっている中学からの友人がいる。高校も一緒で昼休みにはよくゲームの話題で盛り上がっていた。けど高校3年生の昼休み、その友達は車の免許を取った、大学で一人暮らしをするためのアパートを選んだ、と報告してきた。それを聞いてショックだった。今まで同じゲームを遊んでいた仲だったのに、今や彼は自分の免許や自分の家など子どもとは無縁の話をしている。

ぼくはまだ高校3年生、未成年、つまり子どもだと思っていた。しかし同い年の友達は免許やアパートを借りて自分の道を歩み始めていた。つい先日までBFVをしていたじゃないか。同い年で同じ趣味、同じ子どもだと思い込んでいたのはぼくだけだった。もう周りの高校3年生は自分の道を歩んでいる。このなんともいえない置いてきぼりのような孤独感。メイと同じだ。

自分の道を生きる

誰もが自分の道を歩む。このゲームのラストシーンでは、メイもメイなりの考え、決意をもとに過去や不安と対峙し、受け入れ、少しずつ自分の道を探し始める。たとえ今日道に迷っても明日探せばいい。それでもダメなら友達に助けを求めればいい。今はおいしいピザでも食って、意味のないバンド練習をやろう。少しずつ、少しずつ進むもう。一瞬で大人にはなれない。年齢なんて意味がない。自分の道の第一歩、半歩でも進むこと。それがきっと大人になるってことなんだ。たぶん。

総評

本作はメイという20歳の複雑でアンバランスな心境を、可愛らしいグラフィックと相反するかのような現実的な内容で上手く表現できていた。

ルーティーン化する散策も、日々姿を変える町のおかげで最後まで飽きずにプレイができた。キャラクターたちのセリフやテキストも丁寧に翻訳されており、ポッサム・スプリングスの様子を肌で感じられるようだった。

一部の分岐の発生やわかりずらいイベント、やや強引なラストは気にはなるが、この物語の核心を揺らがせるほどのものではない。

大人になるってなんだろう?少しでもそう感じたのなら、このゲームを手に足らない理由はないだろう。

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