「DOOM」がFPSを広めた先駆者なら、「Call of Duty」はシングルプレイヤーモードにおける映画的演出を世に知らしめたFPSだろう。現代や近未来、過去などの戦争を題材に選び、一人称視点で繰り広げられるハリウッド戦争映画のような興奮感。それらをこれでもかと詰め込んだキャンペーンモードは、世界中のゲーマーを熱狂させた。
2018年発売の「COD:BO4」でキャンペーンモードが作られなかった。しかしファンからの強い要望を受けて翌年の「COD:MW」ではキャンペーンモードが復活するといった出来事があるくらい、CODのシングルプレイヤーキャンペーンは人気なのだ。そしてCODは数えきれないほどのFPSに影響を与えた。
今回レビューする「7554」もCODキャンペーンに多大な影響を受けた作品の1つだ。
7554とは

7554はベトナムのゲーム開発スタジオ Emobi Games(現Hiker Games) が開発したFPSゲーム。2011年にベトナムで、2012年には北米で発売された(PC版のみ)。ちなみにベトナム産のゲームが北米で発売されるのは本作が初だという。
1946〜1954年 に勃発した第一次インドシナ戦争をテーマにしたゲームで、4人のベトミン視点から9年間にもわたるフランス軍との戦いが描かれる。
モードはシングルプレイヤー、ホードの2つとなっている。
CODクローンな作品

プレイを初めて一番最初に感じたのは、「あ、これCODだ。」だった。字幕やロード画面、ゲーム内容すべてがCOD。プレイフィールも全て同じだ。正直CODをあまりやったことない人なら間違えてしまうぐらいだろう。
しかもゲームのパッケージにも“7554: Vietnam’s Call of Duty”と書いてあるほどだ。これは完全に開発者の方々も認めている。
そう、これは正真正銘のベトナム版CODなのだ!!
珍しい題材

CODクローンだからといって、舐めるのはまだ早い。確かにゲームプレイにオリジナリティはないが、題材自体が非常に珍しい。なにしろ第一次インドシナ戦争を扱ったゲームはそうないからだ。
公式ページにも「 古い戦場は、事実、研究、詳細に基づいて再現されています。 (和訳)」と書かれているだけあって、雰囲気は抜群。ベトナムの非常に泥臭い高地戦は、特定のミリオタなら刺さるはず。
粗が目立つ

CODを意識した多彩なミッション構成や演出には非常に心が躍った。しかし、残念ながらそれを邪魔するかのような不快な箇所が何箇所もあったのも事実。
まず操作の快適さが満足とは言えなかった。ボルトアクションのモーションは最後まで見なきゃ終わった扱いにならない。しゃがみから立ち姿勢になるのにダッシュを入力しなけらばいけない。視野角が変更できないうえに、非常に狭い。
ゲームプレイ面も同様だ。敵の銃撃を食らった際の画面揺れが激しすぎてまともに銃撃戦ができなかったり、敵の射線や沸きが理不尽だった。また、ミッション目標から少しでも離れたりするだけでカウントがはじまりすぐゲームオーバーになってしまう。
これらの要素が時々気になるのが残念だった。
ミニゲームもCOD風

本作にはシングルプレイヤーだけでなく、ホード、いわゆるゾンビモードが存在する。キャンペーンに登場したロケーションでフランス軍の猛攻を耐え抜いたり、農民ゾンビやキョンシーから生き残るゾンビモード風の2つが用意されていた。
ゲームプレイは至って単純で、ウェーブをクリアしていく形だ。また敵を倒してポイントを獲得することで銃や投擲武器、固定機銃などを利用できるようになる。
これらの点を見ても、やはりCODを相当意識しているのだろう。
普通に楽しめる作品

正直に言ってこの「7554」はCODそのものだ。2011年のゲームにしては少しグラフィックが古臭くまさに「Call of Duty 2」に近い。ゲームプレイ面ももうちょっとオリジナリティを出したほうがよかった気もする。
FPSとしてみればあまりにも普通すぎる。しかし、このゲームの本質はベトナムの開発陣が制作し、ベトナム側の視点で第一次インドシナ戦争を描いたことにある。ベトナムはゲーム開発で有名ではないが、かの有名なCODの面白さの本質を理解しそれを見事に再現した。そして自らの国の歴史に敬意を示し、それをゲームという形に変えた。
「7554」はベトナムの歴史や、ゲーム制作に対する”誇り”を世界中に示したゲームだといえる。
評価: ★★☆
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