努めて馬鹿になれ『Grand Theft Auto III – The Definitive Edition』のプレイ感想。

ゲーム

移動がだるい・アクションが単調・同じことの繰り返し・入れる建物が少ない……。
洋ゲージャンルの代名詞ともいえるオープンワールド。広大なマップと自由度の高いゲームプレイがウリですが、どれも似たような作品の再生産が続いており食傷気味なゲーマーが多いのも事実。かくいう私も昔ほどオープンワールドを楽しめていないように感じます。

最近久しぶりに『Saints Row(2022)』を遊んだのですが、全く面白くありませんでした。未消化のサブクエは面倒で、探索もつまらない、かといって戦闘も面白くない。オープンワールドやるくらいだったらリニアなビデオゲームを遊んだほうが楽しいとさえ感じてしまいました。

しかし、それは遊んでいるゲームが悪いのではないかと思い始めました。もっと有名でもっと評価されている作品ならまだ楽しめるかも……。そうして一番有名なオープンワールドであり基礎を作った作品でもある『Grand Theft Auto III – The Definitive Edition』のプレイを始めました。

つまらない

GTAが他のオープンワールドとは一線を超すリアリティがあるのは確か

最初の数時間は「わー、GTA初の3D作品ってこんな感じなんだ!」「街の作り込みがすげー、本物のアメリカみたい!」「味のあるゲームプレイが最高!」等、修学旅行ではしゃぐ子どもの如く楽しんでいました。しかし、そんな時はあっという間に過ぎ去り、残された時間は苦痛で虚無にまみれた時間でした。

GTAシリーズでよく言われるのが”車の運転が退屈”というもの。本作は3DGTAの始祖にあたる作品ですが、車を運転する場面はしっかり大量に用意されています。ファストトラベルもないため、プレイ時間の大半は運転に費やされることになるでしょう。また、操作性の良い車ならまだしも、中には操作がしづらい車も多数存在します。これを運転するのは本当に辛いので、中盤から終盤にかけてはずっとスポーツカーを強奪していました。

プレイ時間の大半が運転

GTAといえば車両の細かい作り込みも有名で、本作も車両の損壊具合が細かく表現されています。しかし、私はこれがあまり好きではありません。綺麗な状態の車を運転するのが爽快なのであって、オンボロな車を運転したところで気分が下がるだけだからです。しかし、グラセフの車両はちょっと擦っただけですぐに本体がボコボコに凹みます。それでいて街の交通量や操作感の問題も絡み、結果としてピカピカの車両に乗っていられる時間は限られます。リアルで細かい作り込みに熱意は感じますが、プレイヤーの気持ち良さには直結しているとは思えません。この点は『Cyberpunk2077』や各種のレースゲームのような、多少の事故では壊れないという大雑把な表現でも良い気がします。

ボコボコになると萎える

クライムアクションということで銃撃戦等のアクションも用意されていますが、これはあくまでオマケに過ぎません。『Grand Theft Auto Ⅳ』以降で登場するカバーアクションもありませんし、AIはちょっとでも距離を取ると棒立ちしてしまうというおバカっぷりです。武器の操作感も酷く、アクションゲームとしては及第点だと思います。

戦闘に期待してはいけない

メインクエストのミッションも単調であり理不尽さが目立ちます。本作ではミッションの多くで時間制限を掛けられた上で「あいつを殺せ」「ここに行け」「○○を破壊しろ」といったタスクをこなさねばならず、オープンワールドとは裏腹に息苦しいミッションが続きます。時間制限もかなりシビアで、私もプレイ中は何度も何度も失敗しました。挙句ゲームオーバーになるとミッションの最初からとなってしまい、ミッションの目的地まで何往復もさせられます。

気持ちの良い狙撃。これが成功するまで5回くらいリトライしました……。

ミッション毎にやらされる車の運転にイライラし、あまりにショボい銃撃戦に脳が思考停止し、理不尽で作業感の強いミッションに虚無る……。本作のゲームプレイに新鮮さを感じなくなった途端、”いつもの”オープンワールドになってしまったのです。

やっぱオープンワールドってつまらない。そんな感覚が脳裏によぎりました。

初心に帰る、道徳心を捨てる

Xboxの懐ゲー

かつての私はオープンワールドが大好きな少年でした。Xbox360で『Just Cause2』や『RIOT ACT』『Grand Theft Auto Ⅳ』などを、メインストーリーそっちのけで遊んでいました。むしろエンディングまで到達したものは少なく、多くはマップ内で行う様々な遊びに費やしていました。意味もなくマップをぶらついたり、暴れまくったり、ラグドールを駆使したスタントに挑戦したり……。徒歩縛りで山頂を登る登山ごっこや、悪人を見つけ排除する警察官ごっこ、人を殺さずロケーションを巡る市民ごっこなど、当時はとにかく無限に遊び方を思いついたのです。

しかし、年齢を重ねるにつれ、ゲームにもある程度の目的ややり込みを求めるようになります。そうなるとオープンワールドの醍醐味である移動やマップの広さはただの弊害にしかならず、退屈さを感じるようになります。もっと効率よく遊びたい、もっと簡単に楽しみたい。ゲーム内でも評価されたい。そんなコスパをゲームにも求め始めた時、人はオープンワールドを楽しめなくなるのです。

だったら童心に戻ってみましょう。時間の無駄だとか、遊び方が思いつかないとか、やり込みがいがないとか。そんなことは考えず、オープンワールドという広大な遊び場を思い切り堪能することだけに集中します。あなたを縛るものは何もありません。法律やルールも存在しません。心赴くまま好き放題馬鹿をすればいいんです。

爆発は芸術だ!

信号待ちなんてせず車をぶっ飛ばし、歩道を走りまくって『Carmageddon』のように人を轢きまくる。通行中にぶつかって因縁をつけられたのならロケランをぶっ放す。意味もなく高いところから飛び降りる。火炎放射器で人を焼いたり、スナイパーライフルで狙撃する。車を交差点に置きまくって大渋滞を作って爆破する。何とかして電車を止めようと工夫する……。

車道を走るそっちが悪い!
ポスタル・デュードになりきれ

大暴れプレイに飽きたのなら、今度はごっこ遊びをしましょう。主人公のクロードになりきってメインストーリーをなぞる。交通ルールを守って運転する。『Watch Dogs』のエイデン・ピアースのようなビジランテになりきって悪人を成敗する。徒歩縛りでマップを散策する……。

映画で見るようなダイナーを見るとテンション上がる

何にも縛られず、自由に行動を選べる。思いついたことは何でも実行できる。これはオープンワールド最大の醍醐味であり特権なのです。昔のように、無邪気な子供のように、あえて馬鹿になることでオープンワールドの魅力を再発見できるはずです。

『マイクラ』を楽しめる子ども

誰もが認める神ゲー

『Minecraft』を知らない人はいないでしょう。全世界で爆発的にヒットし、未だに衰えを見せない3Dボックス調のオープンワールドクラフトゲームです。日本でもゲーム実況やグッズ展開、コミカライズなどかなりの人気を博しています。そして何よりすごいのは、本作が子どもの心をガッチリと掴んでいるというところです。『Fortnite』や『Splatoon』『ポケットモンスター』と並び、『Minecraft』は若年ゲーマーの定番作品として長らく不動の地位を得ているのです。

なぜマイクラはそこまで人気なのでしょうか?レゴのような可愛らしいボックス型のグラフィックがウケているのでしょうか。それともクリーパーを始めとした愛らしいキャラクターが人気なのでしょうか。確かにそれらもあるかもしれませんが、マイクラが人気の最大の理由、それはこのゲームが”何でもできる”からです。

このゲームでは何種類も用意された四角形のブロックを使って、レゴのように家やオブジェクトを自由に何でも作ることが出来ます。掘っ立て小屋から要塞、さらには街をまるごと1つ再現するなど、思いつくことは何だって作れます。クラフト以外にも遊び方は無限大です。サバイバルモードでは洞窟を探検したり、装備を作成したりするなどRPGのような冒険も出来ます。FPSのような対戦モードを作成したり、かくれんぼや鬼ごっこもすることが可能です。

マイクラではメインとなるストーリーのようなものは存在しません。自分で遊び方を考える砂場、すなわちサンドボックス型ゲームの究極系なのです。だからこそ純粋で柔軟、ちょっとおバカな発想力を持つ子どもたちを虜にしてやまないのです。

マイクラもGTAのようなオープンワールドゲームも、根底にあるのは圧倒的な自由です。与えられた自由の中でいかに楽しむことができるか。形だけの自由を享受する大人と違って、子どもは自由で豊かな発想力を最大限に活かして楽しみます。私たちもマイクラを遊ぶ子どものように、グラセフを遊ばなければ、ゲームが持つ真の自由と楽しさを得ることは出来ないのです。

まとめ:自ら楽しむ心を忘れない

自由を楽しめ!

遊び方がブロックを積むであれ、犯罪であれ、根本は全く変わりません。与えられた自由をどう楽しむか。子供のように馬鹿をやる、これがオープンワールドを楽しむ最大のコツだと思います。その点『Grand Theft Auto III』はプレイヤーの好きなようにプレイできるオープンワールドの先駆者として恥じぬクオリティだと感じました。

著者一言:缶コーヒーのエメマウがマイブーム。

コメント

タイトルとURLをコピーしました