幸せとは『The Red Strings Club』のプレイ感想。

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怒り、悲しみ、嫉妬、苦しみ、不安、恐怖。生きている以上は避けることは出来ない負の感情。この感情によって心が壊れたり、生きるのが辛くなってしまうという人は大勢います。わたしだってそうですし、人間ならば誰だって同じです。こんな負の感情がなくなってしまえば、どれだけ楽に生きていけるのでしょうか。

では、もしもこのような負の感情を一生感じずに済むことが出来たら?ずっと幸せに満ちた気分でいられたら?あなたは本当に幸せになれるのでしょうか…。

『The Red Strings Club』は、人の感情を題材としたサイバーパンク・アドベンチャーゲーム。負の感情を抑制するシステム「ソーシャルメンタルケア」が、たった一企業の思惑によって全人類に適用されようとする未来。この洗脳ともとれる計画を知った2人の主人公が、突如現れた謎のアンドロイドと共に計画を阻止するという物語となっています。

ゲーム自体は「ソーシャルメンタルケア」に関わる重要人物にバーテンダーとして酒を提供しながら会話をしたり、偽造した声で電話をかけるというミニゲームを通して、この計画に関する真実を掴んでいくことが本作の大筋となります。ゲーム自体はアドベンチャーゲームの感覚で進めることが可能ですが、情報量が割と多く、人の名前や関係性、計画の大筋を整理していかないとやや置いてけぼりをくらうので注意が必要です。

企業の陰謀を追い様々な関係者と会話をしながら、「ソーシャルメンタルケア」は本当に悪いものなのか?幸せとはどういったものなのか?と問われるような物語が印象的でした。正直、クリアした後でも私は「ソーシャルメンタルケア」はいいものだと思っています。人工的に与えられた幸せは偽りの幸せかもしれませんが、現実のほぼ全ての問題は人間の負の感情が原因だと私は考えているので、そのような負の感情を抑えることで皆が幸せを感じるのであればそれでいいのではないかと思うのです。

ただ、負の感情も含め人間には感情があるからこそ、人間らしくいられるのであり、そこが人の尊さや美しさを生み出しているとも考えます。負の感情はとても苦しいものですが、そうした感情があるからこそ、人の美しさも生まれるのではないでしょうか。感動的な映画やドラマだって、悲しかったり苦しかったりするからこそ、最後に心にしみるような、大きな感動を与えてくれるのです。ずっとハッピーでいることもいいですが、そこには人間から滲み出るような、尊い美しさや感動はなく、本当の幸せとは言えないと思います。

ゲーム全体は3時間強ほどのボリュームですが、「幸せ」というシンプルながらも非常に深い問いを与えてくれる良作アドベンチャーゲーム。自分にとっての幸せとはなんのか、たまにはそんなことをじっくり考えてみるのもいいのではないでしょうか。

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