世界観を重視したFPS『Atomic Heart』のプレイ感想。

FPS

2月あたりにリリースしていたものの、FOV設定が弄れない+日本語吹き替え待ちで未プレイだった本作。アップデートが来たタイミングでプレイを開始し、無事クリア出来ました。

独自の発達を遂げたソビエト・レトロフューチャーな世界観

ソビエト科学感満載の世界観。

本作はキプロス共和国出身のメンバーが集まるゲームスタジオ Mundfishが開発を手掛けたFPS。現実とは異なる発展を遂げたソビエト連邦がテーマとなっており、その奇抜さ故に発売前から大きな話題となっていました。

物語の舞台はソビエト科学の英知が集まった実験施設「3826番施設」。突如としてロボットが反乱を起こし、主人公であるエージェントP-3が事件の真相に迫るといった物語が展開されます。

ゲーム中には数多くの奇抜な敵や研究施設が登場します。どれもこれも独特で、見たことのないようなものばかりです。未来的だけど、古臭い。ソビエト・レトロフューチャーとでも呼ぶに相応しい世界観は、本作最大の特徴と言えるでしょう。

『BioShock』っぽい

色々試さず1つの能力に振りがち。

ゲームプレイは『BioShock』に似た、1本道サバイバル寄りな調整です。探索や戦闘を通してアイテムを集めながら、各所にある自販機で能力や武器をアップグレードをしていく形式となっています。

戦闘感触も『BioShock』にかなり近いです。右手で武器、左手で特殊能力(2つ割り当て可能)を使える点がかなり似ています。使用できる能力も様々で、敵を浮かせるマステレキネシスから敵を凍らせるフロストバイト、シールドを張るポリマーシールドなど多彩な戦闘スタイルを提供してくれます。

BioShockで見たような

1回の戦闘時に敵は多く登場しないものの、1体1体が手強くかなりの歯ごたえです。登場する敵のほとんどが近接戦闘を中心としており、攻撃速度もかなり速いです。敵の攻撃の瞬間にはオレンジのエフェクトが出るのですが、それでも避けるには熟練のスキルが必要になります(フロムゲーっぽい感触)。特に本作の敵は距離詰めスキルがエグく、離れていても一瞬で目の前に飛んできます。そのため乱戦時は視界外からドつかれることが多く、他のFPSと比べると戦闘はかなり難しい部類に入ると思います。

敵の動きを見切って避けろ!

しかし、本作には回避アクションとしてドッジが実装されています。敵の攻撃をタイミングよく避けながら攻撃をしていくゲームプレイは、フロム産死にゲーのようです。FPSでありながら、ドッジを駆使した近接主体のプレイというのは新鮮味を感じます。

FPSとは思えないボス戦

ボス戦はAAA級。

本作をプレイしていて驚いたのは、ボス戦のクオリティが非常に優れているという点です。FPSのボス戦といえば、HPの多いボスをひたすら撃ちまくる、QTEのみ、ギミックで倒すなど、ゲームとしては味気のないものばかりな印象ではないでしょうか。

『Atomic Heart』のボス戦は、一言で表すと”死にゲー”です。左右の回避行動であるドッジが実装されているおかげで、敵の攻撃をタイミングよく避けられるアクションが取り入れられています。ボスの動きを覚えながら、回避&攻撃を繰り返していく様は、まさに死にゲーのプレイそのもの。かつてのFPSボス戦の単調さを上手くかき消すことに成功しています。

違和感を感じるゲーム進行と不愉快な無限湧き

1本道か箱庭かハッキリしてほしい。

ステージ進行に関しては結構な違和感を感じてしまいました。私はプレイ当初、本作のことを『BioShock』のようなステージ型だと認識していました。しかし、開始数時間はずっと1本道が続きます。あぁそうか、このゲームは1本道なんだと思った矢先、今度はかなり広めの箱庭がプレイヤーの目の前に広がります。どこに進めばいいか分からず混乱したまま、とりあえずマーカーの位置に進むとまたまた1本道。そして数時間をかけて1本道を抜けたと思ったら、今度は先ほどの箱庭に戻ってくるのです……。

ここでようやく本作は1本道パートと箱庭パートのハイブリット型であることが分かりました。この作りのせいでプレイヤーの誘導が上手く機能せず、ある種の気持ち悪さを感じてしまう進行になってしまっていたのです。箱庭型を採用しているにも関わらず1本道パートが無駄に長く、かなり進行のバランスが悪いゲームという印象を受けてしまいました。

また、箱庭パートではマップの至るところに試験場というエリアが存在し、内部のパズルをクリアをすることで武器のMODをアンロックすることが出来ます。言わばかさまし要素なのですが、この試験場を全て巡るのは至難の業です。なぜなら、箱庭に存在する敵が無限湧きするからです。

倒したばかりの敵を修理されると萎える。

本作の敵の一部はプレイヤーが倒しても、一定時間後にドローンが修理をして復活してしまいます。しかもプレイヤーが倒してから数十秒後には復活するほどの早さです。この無限湧きのおかげでじっくりと箱庭を探索することが出来ず、なおかつ戦闘をしてもジリ貧になるため、プレイヤーの探索意欲が削がれます。特に高難易度だとアイテムを無駄に消費するだけなので、探索をするのはかなりリスキーな選択です。試験場という解放要素があるにも関わらず、探索にストレスを感じるような作りにしたのには正直かなりガッカリしました。

細かい点なども気になる

プレイをしていると、ゲームとしてはあまり適切ではない要素も数多く見受けられました。

敵のデータが閲覧できない
戦術を変えよう

本作には数多くの敵が登場し、それぞれに耐性や弱点が存在します。敵をスムーズに倒すうえでは、弱点を突く戦術が必要です。プレイ中にスキャンをすることで敵の特性を見ることが出来るのですが、これが大変やりづらいのです。スキャン中はリアルタイムでゲームが進行し、なおかつ照準を敵に向けたままにする必要があるため、特性部分を読むことがかなり難しいです。本作には敵のデータを閲覧する機能もないためものすごく不便な仕様です。

細かい段差に引っかかる
段差にハマってタコ殴りパターンが多かった気がする。

移動時、戦闘時に細かな段差に引っかかってしまう場面が多々ありました。多数の敵と相手している場面で引っかかり、タコ殴りにされるというのは地味ながらもイライラします。特にボス戦では細かな段差に足を取られたせいでゲームオーバーになる場面が何度もありました。

物語の進行が雑
映像はあるが、道中の会話がとにかく多すぎる。

物語の大半は主人公と相棒であるグローブのチャー・ルズの会話で語られます。映像もあまり多くない上、会話にはかなりの専門用語や人物名が飛び交います。割と重要な情報も道中にあるログで読まされるため、かなり面倒です。

また、世界観の紹介に力を入れすぎるあまり、物語がとってつけられたような印象になってしまっていました。場所と物語の関連性もあまり感じられず、『Atomic Heart』の世界観を紹介するショーケースのような印象が強かったです。

まとめ:良くも悪くも世界観重視

世界観は唯一無二

独特すぎる世界観、シューターながら回避アクションを重視したゲームプレイは本作ならではの良いところ。一方、1本道とも箱庭とも言い難い難解で不快なゲーム進行には疑問が残ります。シューターというよりも、世界観を堪能したいゲーマーには刺さる一本だと感じました。

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