今年で20周年の節目を迎えたFPSの老舗シリーズ『Call of Duty』。これまでたくさんの作品が一年間隔でリリースされてきました。扱うテーマもかなり広く、ミリタリー・戦争モノという点は踏襲しつつも第二次世界大戦から現代戦、はたまた宇宙進出を果たした遠い未来に至るまで、数多くのシリーズが登場しています。有名どころだとModern WarfareシリーズやBlack Opsシリーズなどで愛好家が分かれれますよね。
そしてCoDシリーズといえば、開発スタジオごとに異なるコンセプトも見どころの1つです。CoDシリーズの基礎を作り、Modern Warfareシリーズで名を馳せたInfinity Ward。Black Opsシリーズの立役者にして、ダークな作風やゾンビモードなど奇抜なアイデアが光るTreyarch。何かあれば袋叩きにされるSledgehammer Games。基本はこの3スタジオでローテンションさせながら開発しています。
私のオールタイムベストCoDは『Call of Duty: Modern Wafare2(2009)』ですが、『Call of Duty: World at War』や『Call of Duty: Black Ops』もかなり好きな部類で、スタジオでいうとTreyarch作品の方が好みです。ただしマルチプレイとなるとTreyarchの方は競技指向が強めになってしまうため、Infinity Ward作品の方が好きだったりします。いや、でもSledgehammer Gamesのカオスなバランスも嫌いじゃない……。
とまぁ、CoDは今もメインで遊んでいるくらいには大好きなのですが、今回私がプレイした『Call of Duty 2: Big Red One』はTreyarchが初めて制作したCoDとなります。時期的には『Call of Duty 2』と同じで、本作はその外伝的な位置づけです。前にレビューした『Call of Duty: Finest Hour』と同じPS2・Xboxのみでリリースされた作品となります。今回は同じくPCSX2を使用してプレイを行いました。
本作をプレイしながら強く感じたのは「遊びやすい」ということでした。前作『Call of Duty: Finest Hour』は良くも悪く当時のFPSらしい大雑把な調整が悪目立ちしました。しかし、本作は操作感からゲームプレイのテンポの良さに至るまで、全てがかなり高水準で作られています。ここはさすがTreyarchといったところでしょう。前作のCoD:FHを制作したのはSpark Unlimitedというスタジオで、そこは初の作品がCoDだったということもあり、正直遊びづらいと感じる点が多かったです。Spark Unlimitedはその後、カルト的迷作『Legendary』やシリーズにある意味終止符を打った『Lost Planet 3』などを制作したのち、2015年に閉鎖しているので……。よくある”外部スタジオ製”ってやつです。
それと比べ、TreyarchのCoDは優れているといえます。直感的でレスポンスのよい操作感は今のFPSに匹敵する出来で、ほぼほぼ違和感なくキャラクターを操作することが可能です。移動速度もナメクジから常人並みのスピードになっているため、移動でイラつかせられることはありません。
ゲームのテンポの良さは素晴らしく、まさにCoDのキャンペーンを遊んでいるという実感があります。今作の体力システムに関しては、姉妹作である『Call of Duty 2』とは異なり、回復パック制を継いでいます。CoD:FHでは回復パックを持ち運べたのに対し、本作では触れたら使用されるという仕組みへと変更されています。これは一見、改悪されているように見えますが、代わりにステージの至るところに回復パックが落ちているので全く問題はありません。むしろCoD:FHは一部ステージで理不尽なほど回復パックが落ちていなかったのに対し、本作では全体に満遍なく設置されているため、程よいゲームテンポへと繋がっている点が好印象です。
ステージの緩急のついた構成も素晴らしいです。本作も基本はずっと戦闘が続きますが、適度に移動シーンや映画的演出が挟まるため、程よい長さの戦闘を楽しむことが出来ます。この絶妙なステージ構成は、後のCoDキャンペーンの遊びやすさへと繋がっていったのでしょう。最近のCoDキャンぺーンは蛇足気味なゲーム要素が目立ちますが、本作の戦闘、移動、シーン演出を繰り返すテンポの良さが一番遊んでいて楽しいと感じます。
この頃のTreyarchにはまだダークな作風は感じませんが、地味ながらも戦争らしいシチュエーションの数々には、CoDシリーズの「一兵卒が戦う」というコンセプトに最も合致していると感じました。同時期に出た『Call of Duty 2』や『Call of Duty 3』なんかも同じ雰囲気だと思います。戦争の末端兵だということを強く感じさせる地味な戦いやシチュエーションは、CoDシリーズが目指していた本来のカタチなのでしょう。特に本作の『十字架の丘』というステージは秀逸です。雨と泥にまみれながら、ジリジリとドイツ軍陣地の丘を攻めるという内容です。そこには決してヒロイックな要素はなく、ただただ敵の猛攻に耐えながら進軍するアメリカ兵になれるのです。
遊んでいて何の違和感も感じない、本作はそんな”いつものCoD”といった出来で、まさに実家のような安心感があります。チェックポイントの数もちょうどよく、敵の理不尽な強さや動きもなかったので、一回もPCSX2のクイックセーブを使うことなくクリアできました。また、連合軍側の武器を使いながら、ステージクリアをすることが出来るようになっていたのも好印象でした。CoDの初期コンセプト、そしてCoDのキャンペーンらしさが最もよく出ている作品の1つだと思います。
著者一言:『Kingpin: Reloaded』の評価にビビッて購入しようか迷っている。
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